2013年10月12日土曜日

ヒンドゥーの女神達と女性性への理解

ナーヴァラートリー8日目。

おおまかに説明させて頂くと、
ナーヴァというのは9という意味、ラートリーは夜という意味。9つの夜。

5日の新月から、ナヴァーラートリーが始まっています。
女神を讃え、祈りを捧げる祭典です。

ヒンドゥ三大神と言ったら、シヴァ(破壊)、ヴィシュヌ(維持)、ブラフマー(創造)ですが、それぞれ、パールヴァティ、ラクシュミー、サラスヴァティーという妃がいます。
そしてシヴァの奥さんパールヴァティは、その姿をドゥルガー、カーリーと変化させます。
良妻賢母で愛情深いパールヴァティーは、悪と対峙するため、戦士のドゥルガーに姿を変えます。
 パールヴァティー(左)、シヴァ、ガネーシャの神様一家
ドゥルガー


9日間の最初の 3日はドゥルガーを、次の3日はラクシュミーを、最後の3日はさらすヴァティーにと、順番に祈りを捧げていくのがナーヴァラートリーです。
最初ドゥルガーに 祈りを捧げるのは、自分の悪徳、悪癖、心の弱さ、邪念などを浄化するためです。
自分で悪いとわかっているからこそ、普段表に出さないよう隠しているような部分。

それらが消えると、富と豊かさのラクシュミーを讃えます。

ラクシュミー

悪いものがなくなると良いものが入ってくる、ということでしょうか。

最後の3日は智慧と才能の女神サラスヴァティーに祈りを捧げます。

 悪徳がなくなり、豊かさを得る事で、自分本来の才能が輝き出すということでしょうか。

3日づつですが、この悪を常に見張り取り除く役割のドゥルガーには、最初の3日が終わってからもずっと祈りが捧げられます。
きっとそこが一番大事なところなんですね。
 些細な邪さや純粋でないものは、容易に人の心に入って来ます。
ドゥルガーが闘っている悪魔は、その血の一滴からさらに100人もの悪魔を生み出してしまいます。悪い思考がまた次のもっと悪い考えを引き起こし、とめどなく溢れ出して身を滅ぼさんとするかのように。
だから、ドゥルガーは、カーリーという最終形態に変化します。

 カーリー

すべてをなぎ倒す勢いで逆上しまくり、恐ろしいほどの力で悪魔を倒し、その血を一滴も残さないよう飲み干して、勝利のダンスを踊ります。
そのダンスが激し過ぎて、世界が崩壊してしまうと止めに入った最愛の夫シヴァを踏みつけ、やっと我に返り舌をぺろっと出します。
ナヴァラートリーの終わりの方には、ドゥルガーでは太刀打ち出来ない深いところの根強い悪を根こそぎきれいにさらって貰います。
そのため、カーリーにも祈りが捧げられます。
以前はなんてグロテスクなんだと思っていましたが、今は美しいとさえ思う。
不思議です。

私はこのインドの世界観が大好きです。
女性の強さを神格化し、押し止めるでも押さえ付けるでもなくそういうものなんだと祀り上げる。素晴らしい理解だなと思います。
そして、「女性ってこういうものだ」と教えているのでしょう。

従順で素直な女性像 ばかりを良しとするのは、男性の性の意識が関係しているのだと思います。
日本は仏教の影響を受けているので、そういう風潮が(表向きには)強いですね。
仏陀はもちろん男性だから。
女性の魅力をマーラー(悪魔)だと説いています。
誘惑に負けず、己の修行を完成させるのだと。
抗い難いのは自らの心もしくは本能の問題。女性が罪なわけではありません。
でもそう伝えられて来て、そういうすり替わった考えで女性が卑下され支配されて来た歴史があって。

タントラの考え方では、シヴァとパールヴァティは本来一体なのだと、男性性、女性性の合一 こそが悟りへの道であり、完成した姿なのだと教えられています。
また、シヴァの力をリンガと呼ばれる男根で現わし、至る所で祀られています。
それに対するのがヨーニです。リンガ/ヨーニは生命力や完成されたもののシンボルとして、もしくはともすれば非生産的な消耗となってしまう性を聖別することで、浄化しているのですね。
排除するのではなく、目を背けるのではなく、きちんと理解し正しく扱う。

インドにはカーマスートラという性を正しく扱うための奥義書があります。
タオも性エネルギーを正しく昇華させて自分の生命力を高め寿命を延ばす技などが古くから身分の高い人の間に秘伝として伝えられて来ました。健康に生きるための秘訣として、バランスの取れた生き方の一つの要素としてきちんと語られています。
ただし、教養のある人、心を律する強さのある人、身体的に健康である人、理解力があり真面目に修練する素養のある人、でないと正しく伝わらず、パワフルなその力が誤った使われ方をされてしまうので、取り扱い厳重注意で容易に表には出さなかったのですね。

最近よく書店などで、性の事を扱った新刊の書籍を目にします。
共通しているのは、間違った男性目線の屈折した性の意識を正しく戻して行こうというような内容。ヨガをする人が世界中で増えたり、インターネットなどで情報が迅速に行き渡るようになったこと、ここ最近の世界情勢や自然災害の猛威などから、変る事が必要と思う人が増えているのかもしれません。
私も、女性がまず自分の性である女性性を正しく理解し扱い、パートナーに伝えることが大事だと思っています。そうでしかリアルに伝わらないもの。
それから男の子を育てているお母さん。

2012年、男性性で進んで来た時代は終わり、今は女性性で循環させていく時代。
世界中のマスター達がそう語っていますよね。

ナーヴァーラートリーの期間、自分も自分のドゥルガーの気質を感じ、またカーリーの要素も持ち合わせている事を十分に受け入れ、それへの理解が深くなったと思います。
良妻賢母で愛情深いパールヴァティーは、 もともとはシヴァの婚約者サティーの生まれ変わりです。
従順で純粋で一心にシヴァを愛するサティーが、シヴァと結婚し、ドゥルガーの強さを身につけ、時にはカーリーにも変化する。
私はヨガを教えるという職業柄、また思春期の息子を持つシングルマザーである今の生き方から、日頃のドゥルガー気質がかなり高いですね。

女性ってそういうものではないでしょうか。
それが自然なんですよ。

ナーヴァーラートリー、残すあと一日。
すべての女神に、すべての女性性を讃えたいと思っています。

いつか聖地を回ってみたいです。